遺産分割協議書とは?作成方法・必要事項・注意点を解説
相続が始まり、遺言書がない場合には、相続人同士で遺産の分け方を話し合うことがあります。
この話し合いを「遺産分割協議」といい、話し合った内容を書面にしたものが遺産分割協議書です。
「遺産分割協議書には何を書けばよいのか」「相続人全員の署名や押印が必要なのか」「不動産がある場合はどうすればよいのか」と疑問に思う方もいるでしょう。
遺産分割協議書は、預貯金や不動産などの相続手続きを進める際に重要になる書類です。
この記事では、遺産分割協議書とは何か、作成する際の必要事項、注意点、相続人が海外にいる場合の対応、行政書士に依頼できる業務範囲について解説します。
遺産分割協議書とは?
遺産分割協議書とは、相続人全員で話し合った遺産の分け方を記載した書類です。
相続人が複数いる場合、遺言書がないなどの事情によって、相続人同士で遺産をどのように分けるかを話し合うことがあります。
その話し合いで合意した内容を明確にして書面にしたものが遺産分割協議書です。
法務局も、遺産分割協議書について、相続人全員が協議した遺産の分割方法を明記し、分割方法に同意したことを証明する書類と説明しています。
なお、遺産分割協議書は法務局が用紙を交付して作成するものではありません。当事者が作成する書類です。
遺産分割協議は誰が参加する?
遺産分割協議には、原則として相続権のある相続人全員が参加する必要があります。
一部の相続人だけで話し合って作成した遺産分割協議書では、相続手続きを進めることができない場合があります。
そのため、遺産分割協議書を作成する前に、まず誰が相続人なのかを正確に確認することが重要です。
相続人調査については、戸籍などを確認しながら法律上の相続人を整理する必要があります。
相続人を一人でも見落とさないことが重要
「子どもはいない」「兄弟は一人だけ」など、家族から聞いた情報だけで相続人を判断することはできません。
前婚の子ども、養子、代襲相続などが関係する場合もあります。
そのため、遺産分割協議を始める前に、戸籍などの資料から相続人を確認することが大切です。
遺産分割協議では何を決める?
遺産分割協議では、亡くなった方が残した財産を誰が取得するのかを具体的に話し合います。
例えば、次のような内容があります。
- 自宅や土地を誰が取得するか
- 預貯金をどのように分けるか
- 株式などの金融資産を誰が取得するか
- 車などの財産を誰が取得するか
- 複数の財産をどの相続人が取得するか
不動産がある場合には、単純に「家は長男が相続する」と書くのではなく、どの不動産を指しているのか明確にすることが重要です。
相続財産の内容を正確に確認したうえで、相続人全員が合意できる分け方を決めます。
遺産分割協議書には何を書く?
遺産分割協議書には、協議の対象となった相続財産と、その財産を誰が取得するのかを具体的に記載します。
一般的には、次のような内容を整理します。
- 被相続人の氏名
- 被相続人の死亡日
- 相続人全員が協議内容に合意したこと
- 相続財産の具体的な内容
- 各相続人が取得する財産
- 相続人全員の氏名・住所
- 作成日
- 相続人全員の署名または記名
- 相続人全員の押印
法務局の案内でも、被相続人の氏名・死亡日、相続人が遺産分割内容に合意していること、相続財産の具体的な内容、相続人全員の氏名・住所などを記載し、全員が実印を押印する必要があるとされています。
ただし、実際に提出する手続きによって必要書類や形式が異なる場合があります。提出先の最新の案内を確認することが大切です。
不動産がある場合の遺産分割協議書
相続財産に土地や建物などの不動産が含まれている場合は、対象となる不動産を正確に特定できるように記載します。
不動産については、登記事項証明書などを確認し、所在地、地番、家屋番号などの情報を整理しておくとよいでしょう。
「自宅」「実家」などの一般的な呼び方だけでは、どの不動産を指しているのか明確にならない場合があります。
また、遺産分割協議書を作成した後に相続登記を行う場合には、法務局へ提出する書類として使用されることがあります。
法務局は、遺産分割協議によって不動産を相続した場合の相続登記について、遺産分割協議書や相続人の印鑑証明書などを含む必要書類を案内しています。
なお、相続登記の申請代理は司法書士などの専門家が取り扱う業務です。行政書士が相続登記そのものを代理申請するものではありません。
遺産分割協議書を作成するときの注意点
相続人全員の合意を確認する
遺産分割協議では、相続人全員の合意が重要です。
相続人の一人を除外したまま協議を進めることがないよう、最初に相続人を正確に確認しましょう。
財産を漏れなく確認する
不動産、預貯金、有価証券、自動車など、被相続人の財産をできるだけ整理してから協議を行います。
後から新しい財産が見つかると、その財産について改めて対応が必要になる場合があります。
不動産の表示を曖昧にしない
不動産については、登記上の情報を確認して、対象となる土地や建物を特定できるようにします。
複数の不動産を所有している場合は、特に注意が必要です。
預貯金についても具体的に記載する
預貯金を相続する場合には、金融機関名、支店名、口座の種類などを確認し、どの預貯金を誰が取得するのか分かるように整理します。
金融機関によって必要書類や手続きが異なるため、実際の手続きを行う金融機関にも確認しましょう。
後から財産が見つかった場合の扱いも考える
相続手続きを進めた後に、新しい預貯金や不動産などが見つかることがあります。
そのため、財産調査を十分に行ったうえで遺産分割協議を進めることが重要です。
相続人が海外にいる場合はどうする?
相続人の一人が海外に住んでいる場合でも、その人が相続人であることに変わりはありません。
ただし、遺産分割協議書の作成や必要書類の準備、署名・押印などについて、国内に住んでいる相続人とは異なる対応が必要になる場合があります。
特に、相続人が中国など海外に住んでいる場合には、必要書類の取得方法や本人確認などについて、個別に確認する必要があります。
海外在住の相続人がいるケースでは、最初に相続人の所在地と連絡方法を整理しておくと、その後の手続きを進めやすくなります。
遺産分割協議がまとまらない場合は?
相続人全員が話し合いをしても、遺産の分け方について合意できない場合があります。
例えば、不動産を誰が取得するか、預貯金をどのように分けるかなどについて意見が一致しないケースです。
相続人同士の話し合いで解決できない場合には、家庭裁判所の遺産分割調停などを利用する方法があります。
相続人同士の争いがある場合や、代理交渉・訴訟などが必要になる場合は、弁護士への相談を検討する必要があります。
行政書士は、相続人間の紛争について、当事者の代理人として交渉する業務を行うものではありません。
遺産分割協議書は自分で作成できる?
遺産分割協議書は、相続人自身で作成することもできます。
法務局にも記載例が公開されています。
ただし、実際に作成する場合は、相続人と相続財産を正確に確認し、協議内容が明確に伝わるように記載する必要があります。
特に、相続人が多い場合、不動産が複数ある場合、相続人が海外にいる場合などは、必要な確認事項が増えることがあります。
「相続人が全員そろっているか」「財産の記載に漏れがないか」「誰がどの財産を取得するのかが明確か」を一つずつ確認することが大切です。
行政書士に遺産分割協議書の作成を依頼できる?
行政書士は、法律で認められた業務の範囲内で、相続に関する書類作成や資料収集をサポートできます。
例えば、次のような業務が考えられます。
- 相続人調査
- 戸籍等の収集
- 相続関係説明図の作成
- 法定相続情報一覧図の作成支援
- 相続財産に関する資料整理
- 遺産分割協議書の作成
遺産分割協議書を作成する前に、相続人と相続財産を整理しておくことで、協議内容を具体的にまとめやすくなります。
一方で、相続登記の代理申請は司法書士、相続税の申告は税理士、相続人同士の紛争や代理交渉などは弁護士が担当する業務です。
案件の内容に応じて、適切な専門家と連携することが重要です。
相続手続きの中で遺産分割協議書はどこで使う?
相続手続きでは、最初から遺産分割協議書だけを作成するわけではありません。
一般的には、まず遺言書の有無を確認し、相続人と相続財産を調査します。
そのうえで、遺言書がない場合などには、相続人同士で遺産の分け方を話し合い、必要に応じて遺産分割協議書を作成します。
その後、不動産、預貯金など、それぞれの財産について必要な相続手続きを進めます。
相続全体の流れについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
よくある質問(Q&A)
Q1.遺産分割協議書は必ず作らなければなりませんか?
すべての相続で必ず遺産分割協議書が必要になるわけではありません。
遺言書がある場合や、相続人が一人の場合など、遺産分割協議自体が必要ないケースもあります。
一方、複数の相続人がいて、遺産の分け方について話し合った場合には、その合意内容を明確にするため、遺産分割協議書を作成することが重要です。
Q2.相続人全員が同じ紙に署名しなければなりませんか?
必ずしも一枚の書類に全員が同時に署名する必要があるとは限りません。
同一内容の遺産分割協議書を相続人それぞれが署名・押印し、それらをそろえる方法もあります。
実際の提出先や手続きに応じて、必要な形式を確認しましょう。
Q3.遺産分割協議書を作った後に財産が見つかったらどうなりますか?
遺産分割協議書に記載されていない財産が後から見つかった場合、その財産について改めて対応が必要になることがあります。
そのため、協議前に被相続人の財産をできるだけ調査しておくことが大切です。
Q4.遺産分割協議書に印鑑証明書は必要ですか?
必要となる手続きや提出先によって異なります。
例えば、相続登記では、法務局が遺産分割協議書や相続人の印鑑証明書について案内しています。
実際に提出する手続きに応じて、最新の必要書類を確認してください。
Q5.遺産分割協議書を行政書士に依頼できますか?
行政書士は、業務の範囲内で遺産分割協議書の作成をサポートできます。
また、相続人調査、戸籍収集、相続関係の整理などをあわせて依頼できる場合があります。
ただし、相続人同士の争いがあり、代理交渉などが必要な場合は弁護士への相談が必要です。
2026年9月時点の遺産分割協議書に関するポイント
2026年9月現在、遺産分割協議によって不動産を相続した場合には、相続登記の手続きが関係します。
相続登記の申請は、2024年4月1日から義務化されています。
法務局は、遺産分割協議によって不動産を取得した場合の相続登記について、遺産分割協議書などの必要書類や申請方法を案内しています。
なお、遺産分割協議書の作成方法や相続財産の分け方については、法務局が個別の相談や判断を行うものではありません。
実際の相続では、相続人、財産、遺言書の有無などによって必要な対応が異なります。作成時点の最新情報を確認しながら手続きを進めることが重要です。
まとめ|遺産分割協議書は相続人全員の合意を明確にする重要な書類
遺産分割協議書は、相続人全員で話し合った遺産の分け方を明確にするための書類です。
作成する前には、まず相続人と相続財産を正確に確認することが重要です。
特に注意したいのは、次のポイントです。
- 相続人全員の合意を確認する
- 相続財産をできるだけ正確に調査する
- 不動産は対象を特定できるように記載する
- 預貯金などの財産も具体的に整理する
- 提出先に応じた必要書類を確認する
遺産分割協議書を作成すること自体が目的ではありません。
その前提となる相続人調査と財産調査を適切に行い、相続人全員が納得できる内容を明確にすることが大切です。
相続人調査、戸籍収集、相続関係の整理、遺産分割協議書の作成などについては、行政書士に相談できる場合があります。