相続手続きは何から始める?死亡後の流れと必要な手続きを解説
家族が亡くなると、葬儀だけでなく相続の手続きも始まります。
「相続手続きは何から始めればいい?」
「銀行や不動産の手続きは、いつ始めればいい?」
このように迷う方は少なくありません。
相続では、いきなり名義変更を始める必要はありません。
まず、遺言書・相続人・相続財産の3つを確認することが大切です。
この記事では、死亡後に進める相続手続きについて、全体の流れを分かりやすく解説します。
相続が始まったら、まず何を確認する?
相続が発生した直後は、やるべきことが多く感じられます。
しかし、すべての手続きを一度に進める必要はありません。
最初は、次の4つを確認しましょう。
- 遺言書が残されているか
- 誰が相続人になるのか
- どのような財産があるのか
- 借金などの負債があるのか
この順番で整理すると、その後の手続きが見えやすくなります。
特に、相続人と財産の確認は重要です。
誰が相続人なのか分からなければ、遺産分割協議も進められません。
財産や負債が分からなければ、相続放棄などの判断も難しくなります。
相続手続きのおおまかな流れ
一般的な相続では、次のような流れで整理すると分かりやすくなります。
- 死亡・相続開始
- 遺言書を確認する
- 相続人を調査する
- 相続財産と負債を調査する
- 相続放棄などを検討する
- 遺産分割協議を行う
- 遺産分割協議書を作成する
- 預貯金・有価証券などの手続きを行う
- 不動産があれば相続登記を行う
- その他の必要な手続きを行う
ただし、すべての相続がこの順番になるわけではありません。
遺言書の有無や相続人の構成によって、必要な手続きは変わります。
そのため、まず全体を把握してから、自分のケースに必要な手続きを整理しましょう。
① 遺言書があるか確認する
相続が始まったら、遺言書が残されていないか確認します。
遺言書がある場合は、その内容が相続手続きに影響します。
自宅だけでなく、法務局などに保管されている可能性もあります。
自筆証書遺言を確認する
自筆証書遺言は、遺言者本人が作成する遺言です。
自宅などで発見した場合は、保管状況によって必要な手続きが異なります。
そのため、発見した時点で勝手に判断しないことが大切です。
遺言書の種類や基本的な作成方法については、「遺言書とは?種類・作成方法・メリットを分かりやすく解説」で詳しく説明しています。
法務局に保管された遺言書
自筆証書遺言には、法務局で保管する制度があります。
この制度を利用していた場合は、自宅で保管されていた遺言書とは手続きが異なります。
詳しくは、「自筆証書遺言書保管制度とは?法務局での保管方法と注意点を解説」をご覧ください。
公正証書遺言も確認する
公正証書遺言は、公証人が関与して作成される遺言です。
公正証書遺言が作成されている場合も、まず内容を確認します。
そのうえで、預貯金や不動産などの手続きを進めます。
② 相続人を確認する
遺言書と同時に、誰が相続人になるのかを確認します。
「家族はこの人たちだけ」と思っていても、戸籍を確認すると別の親族関係が判明することがあります。
戸籍で相続人を確認する
相続人を確定するためには、戸籍を確認することが基本です。
被相続人の出生から死亡までの戸籍などを調査します。
離婚や再婚、養子縁組などがある場合は、特に注意が必要です。
子どもがいない場合も、相続人の確認は重要です。
状況によっては、配偶者と兄弟姉妹などが相続人になることがあります。
相続人調査を詳しく知りたい方へ
相続人調査では、戸籍を集めるだけではなく、親族関係を確認します。
調査の範囲は、相続人の構成によって変わります。
兄弟姉妹が相続人になるケースでは、調査する戸籍が多くなることもあります。
詳しい調査方法については、「相続人調査とは?なぜ必要?戸籍の集め方も解説」をご覧ください。
③ 相続財産を調査する
相続人の確認と並行して、財産も調査します。
ここでは、プラスの財産だけを見るのではありません。
借金やローンなどの負債も確認する必要があります。
確認する主な財産
代表的な財産には、次のようなものがあります。
- 土地・建物などの不動産
- 銀行などの預貯金
- 株式・投資信託などの有価証券
- 生命保険
- 自動車などの財産
- その他の財産上の権利
負債も忘れずに確認する
相続では、借入金やローンなども調査します。
未払いの医療費や税金などが残っている場合もあります。
財産と負債の全体像を把握することで、その後の判断がしやすくなります。
必要に応じて、財産の一覧表を作っておくと便利です。
④ 相続放棄などを検討する
財産を調査した結果、借金などの負債が多いことがあります。
その場合は、相続放棄や限定承認を検討することがあります。
相続放棄には期間がある
相続放棄は、家庭裁判所に申述する手続きです。
原則として、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に行います。
この期間については、裁判所「相続の放棄の申述」でも確認できます。
3か月で判断できない場合
財産や負債の調査に時間がかかる場合もあります。
その場合は、一定の要件のもとで家庭裁判所に期間の伸長を申し立てることができます。
したがって、借金があるかもしれない場合は、早めに調査を始めることが重要です。
⑤ 遺産分割協議を行う
遺言書がない場合などは、相続人の間で遺産の分け方を決めることがあります。
これを遺産分割協議といいます。
誰がどの財産を取得するか決める
例えば、自宅を配偶者が取得するケースがあります。
預貯金を複数の相続人で分けることもあります。
株式などを特定の相続人が取得する場合もあります。
このように、具体的な財産の分け方を相続人で話し合います。
合意した内容を書面にする
遺産分割協議で合意した場合は、遺産分割協議書を作成することがあります。
この書類は、預貯金や不動産などの相続手続きで使用されることがあります。
ただし、遺言書がある場合は、遺言の内容や財産の状況によって手続きが変わります。
⑥ 預貯金・有価証券などの手続きをする
遺産の内容が整理できたら、各金融機関などで手続きを進めます。
銀行や証券会社によって、必要書類や手続き方法は異なります。
金融機関ごとに必要書類を確認する
一般的には、次のような書類を求められる場合があります。
- 戸籍関係書類
- 遺言書
- 遺産分割協議書
- 相続人の本人確認書類
- 金融機関所定の書類
ただし、必要書類はケースによって異なります。
そのため、手続きをする金融機関へ事前に確認することが大切です。
法定相続情報証明制度も利用できる
相続手続きでは、法定相続情報証明制度を利用できる場合があります。
法務局で認証を受けた法定相続情報一覧図の写しを、各種相続手続きに利用できます。
制度の詳細は、法務局「法定相続情報証明制度」で確認できます。
⑦ 不動産があれば相続登記をする
土地や建物を相続した場合は、相続登記が必要になります。
2024年4月1日から、相続登記の申請が義務化されています。
相続登記には3年の期限がある
原則として、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請します。
遺産分割によって不動産を取得した場合も、別途期限が定められています。
正当な理由なく義務に違反すると、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。
最新の制度については、法務省「相続登記の申請義務化」をご確認ください。
過去の相続も確認が必要
2024年4月1日より前に発生した相続も、相続登記の義務化の対象です。
法務省は、こうした相続について、原則として2027年3月31日までに登記する必要があると案内しています。
長期間名義変更をしていない不動産がある場合は、早めの確認をおすすめします。
なお、相続登記の申請代理は司法書士などが扱う業務です。
行政書士が相続登記そのものを代理申請するものではありません。
相続手続きには期限があるものもある
相続に関する期限は、手続きごとに異なります。
そのため、「相続手続きはすべて3か月以内」と考えるのは正確ではありません。
代表的な期限を確認する
| 手続き | 代表的な期限 |
|---|---|
| 相続放棄 | 原則として相続開始を知った時から3か月以内 |
| 相続税の申告 | 原則として死亡を知った日の翌日から10か月以内 |
| 相続登記 | 原則として不動産取得を知った日から3年以内 |
相続税については、すべての相続で申告が必要になるわけではありません。
課税対象となる財産の額などによって、申告の要否が決まります。
国税庁は、相続税の申告期限を原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内と案内しています。
詳しくは、国税庁「相続税の申告と納税」をご確認ください。
相続税の具体的な判断や申告については、税理士への相談が必要です。
相続手続きの前に準備したい書類
相続手続きでは、さまざまな書類を使用します。
ただし、最初からすべての書類を揃える必要はありません。
まず、手元にある資料を整理してみましょう。
最初に確認したい資料
- 被相続人の戸籍関係書類
- 相続人の戸籍関係書類
- 住民票などの資料
- 遺言書
- 不動産関係の資料
- 預貯金の通帳や金融機関の資料
- 株式・投資信託などの資料
- 借入金・ローンなどの資料
必要書類は手続きごとに異なる
金融機関と法務局では、必要になる書類が異なります。
税務署への申告でも、別の資料が必要になる場合があります。
したがって、「この書類だけで全部の手続きができる」とは限りません。
手続き先ごとに必要書類を確認しましょう。
相続手続きを自分でするか専門家に依頼するか
相続手続きは、必ず専門家へ依頼しなければならないわけではありません。
財産や相続人が少ない場合は、自分で進められるケースもあります。
自分で進めやすいケース
例えば、次のようなケースです。
- 相続人が少ない
- 親族関係が比較的単純
- 財産の種類が少ない
- 相続人同士で話し合いができている
- 必要な資料を自分で集められる
専門家への相談を検討したいケース
一方、次のような場合は、早めに専門家へ相談すると安心です。
- 相続人が多い
- 戸籍調査が複雑
- 海外在住の相続人がいる
- 外国籍の相続人がいる
- 不動産が複数ある
- 遺産分割協議書が必要
- 相続関係が複雑である
特に海外在住の相続人がいる場合は、必要書類や手続き方法が変わることがあります。
早い段階で全体を整理すると、後の手続きも進めやすくなります。
行政書士がサポートできる相続手続き
相続では、書類の収集や作成に時間がかかることがあります。
行政書士は、法律で認められた範囲で相続関係の書類作成や資料収集をサポートできます。
行政書士が対応できる主な業務
例えば、次のような業務があります。
- 相続人調査
- 戸籍などの収集
- 相続関係説明図の作成
- 法定相続情報一覧図に関する書類整理・取得サポート
- 遺産分割協議書の作成
- 相続関係書類の整理
- 各種相続手続きに必要な書類の収集・整理
他の専門家が担当する手続きもある
相続に関するすべての手続きを行政書士が代理できるわけではありません。
例えば、相続登記の申請代理は司法書士の業務です。
相続税の申告は税理士の業務です。
相続人同士の紛争や訴訟については、弁護士への相談が必要になります。
それぞれの専門家が担当できる範囲を確認することが大切です。
相続全体について相談したい方は、相続・遺言・公正証書遺言サポートもご覧ください。
2026年9月時点の相続手続きに関する最新情報
2026年9月現在、相続登記の申請義務化はすでに施行されています。
2024年4月1日より前に発生した相続についても、相続登記の義務化の対象です。
法務省は、こうした相続について、原則として2027年3月31日までが履行期限になると案内しています。
また、2026年4月の法務局の案内では、一定の土地について相続登記の登録免許税が免税となる措置が、2027年3月31日まで延長されています。
不動産の価額が100万円以下の土地など、一定の条件を満たす場合が対象です。
相続放棄については、原則として相続開始を知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述します。
相続税の申告が必要な場合は、原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。
これらは、それぞれ異なる制度上の期限です。
相続の内容によって必要な手続きや期限は変わります。
実際に手続きを進める際は、法務省、法務局、裁判所、国税庁などの最新情報を確認してください。
よくある質問
Q1.家族が亡くなったら、相続手続きは何から始めますか?
まず、遺言書、相続人、相続財産の3つを確認しましょう。
その後、負債の有無や期限のある手続きを確認します。
Q2.遺言書があれば遺産分割協議は不要ですか?
遺言書の内容によっては、遺産分割協議を行わずに手続きを進められる場合があります。
ただし、財産の内容や遺言の内容によって対応は異なります。
Q3.相続人が誰なのか分からない場合はどうしますか?
戸籍を確認して相続人を調査します。
家族の記憶だけで判断せず、戸籍上の親族関係を確認することが大切です。
Q4.相続財産に借金がある場合はどうしますか?
相続放棄や限定承認を検討することがあります。
相続放棄には原則3か月の期間があるため、早めに財産と負債を確認しましょう。
Q5.不動産がある場合、相続登記は必要ですか?
2024年4月1日から相続登記の申請が義務化されています。
原則として、不動産を相続したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。
Q6.相続手続きを行政書士に依頼できますか?
相続人調査、戸籍収集、遺産分割協議書の作成などについて、行政書士がサポートできる場合があります。
ただし、相続登記、相続税申告、相続人間の紛争などは、それぞれ司法書士、税理士、弁護士の業務です。
まとめ|相続は「遺言・相続人・財産」の確認から
相続が始まると、たくさんの手続きが必要になります。
しかし、最初からすべてを進める必要はありません。
まずは、次の3つを確認しましょう。
- 遺言書:どのような遺言が残されているか確認する
- 相続人:戸籍を確認して相続人を整理する
- 財産:不動産や預貯金だけでなく、負債も確認する
この3つを整理すると、次に必要な手続きが見えやすくなります。
相続人調査や戸籍収集、遺産分割協議書の作成などでお困りの場合は、行政書士への相談もご検討ください。
相続登記、相続税申告、相続人間の紛争などについては、それぞれの専門家と連携して進めることが重要です。